薬屋、シアトルに移住する

アメリカで薬剤師になるべく奮闘中の日本人薬剤師の日々を綴ります。アメリカで買える便利な市販薬のこととか、英語のこととか。

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アメリカの職場で休みがとりやすい理由 -Floater positionって何?-

アメリカの病院で働き始めて約2年になるのですが、日本の病院にいたときに比べて休みが本当にとりやすいなーと感じています。日本の病院には5年間勤めたのですが、まとまった休みは最長で7日間、年に1回のみで1年目の新人は不可でした。これでも日本の医療業界的にはおそらく良い方じゃないでしょうか。

今の職場では働き始めて1年程で10日間の休みを取得、2年目にも7日間と10日間のまとまった休みをもらい、単発の有給もちょいちょい使用したりしていますがまだ数日分残っています。

そして重要なのは、休む時に後ろめたさがゼロという点です。日本でほぼ必須の休み明けお土産制度もありませんし、自分が休むことで他の誰かに迷惑がかかったり申し訳ないと感じることもありません。

 

そんな素敵な仕事環境を作り出す一員、Floaterという存在を紹介しようと思います。 

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Floater positionとは? 

ある程度の大きさの病院もしくは薬局には大抵、Floater、もしくはFloat poolと呼ばれるポジションがあります。Floaterの定義はこちら。

an employee without a fixed job assignment: filling in when someone is out.

特定の職場を持たず、他の社員の必要に応じてどこにでも行って働くポジションです。どこにでも、と言っても範囲は指定でき、それは入社時の契約で決めます。どの職場でも働けるように、入職後に複数の勤務地でトレーニングを受けます。Floater Pharmacist, Floater Pharmacy Technicianなどがありタイトルに応じた仕事をするのですが、要は会社の抱える穴埋め要員です。

役割的には派遣社員に少し近いですが、派遣会社に所属するのとは違いその会社の雇用する正社員になりますので、ベネフィットもしっかりしていますし突然の解雇などは少ないです(ゼロではないのは、アメリカでは正社員でもレイオフあるので、、)。ほとんどの場合即戦力の経験者が求められます。

 

Floater positionがある利点

Floaterが穴埋めをしてくれることで、社員の有給、バケーション、病欠、産休、棚卸要員などなど様々な状況に対応できます。

有給はEメールで申請するのですが、申請後数日後にこの日はOK、この日は空いているFloaterがいないから無理、といった審査結果が送られてきます。きちんと自分の代わりがいるので、有給使用にうしろめたさを感じることは全くありませんし、有給日数がきちんとあれば2~3週間のバケーションなども取得できます。

今の職場は人数が多いため、いつも誰かしらがバケーションのような印象で、

”最近見なかったけど調子どうよー?”

”そうそう、10日間休みだったからハワイ行ってきた”

”まじで、そんないなかったっけー?笑”

みたいな会話もよくあります。笑

日曜出かけるから次の月曜休みたいな、とか、5日間連続で働くのダルいから水曜休みとりたいな、とかどんなくだらない理由でも遠慮なく有給を使用して良いのです。そもそも有給ってそういうものであるはずですよね。

 

Floater positionとして働くメリット

給料が良い

急なスケジュール変更があったり毎回慣れない職場で働かなければいけないなどといった不便な点を踏まえて、うちの病院の場合、時給$2くらい高いです。

優先的にバケーションがとれる

必ずいなければいけないという職場がないので、バケーションの予定は立てやすく、承認されやすいです。各店舗から要請がない日はコールセンターやメールオーダー薬局といった、探せばいくらでも仕事がある系の職場に派遣されますので、仕事がないという心配もありません。

経験を積むことができる

たとえばテクニシャンの場合、薬局の窓口で接客もあれば点滴の混注業務もあり、デスクワークもあり電話対応もありでいろいろな業務を行います。いろんな視点で経験を積んでるので、仕事がデキる人が多いです。

人脈ができる

毎回いろいろな職場で様々な同僚と働くので、自然と顔が広くなります。業務で疑問点や確認があるときなど、多店舗の知り合いに助けを求めることもできますし、様々な情報も入ってきやすいです。 

 

Floater positionとして働くデメリット

スケジュールが急に変わる

基本的には数ヶ月分のシフトが前もってもらえるようですが、当日や前日といった急な変更も多いようです。またシフト変更は確実を期すため電話で知らされるので、朝の5時半に電話で叩き起こされ、今日11時からいける?なんてこともあるとか(ならもうちょっと寝かせてくれ、ていう)。下手すると一日の途中で、午後から違う職場に行ってなんてこともあります。私が採用されたときちょうどFloaterのポジションにも空きがあり、どっちが良い?と聞かれたのですが、車がないと話にならないようだったので職場固定の方にしました。

顔なじみになりにくい

基本的には毎日違う職場に行くので、顔なじみの患者さんは出来にくいですし、医師や看護師と連絡するときも完全に他人同士です。毎日同じ職場だとそれぞれの医師のクセや仕事の早いメディカルアシスタントの名前など便利情報を自然と覚えていくので、そういった点では少しやりにくいかもしれません。

苦手な職場にも行かなければいけない

どうしても〇〇店の××さんとは折りが合わない、などがもしあっても、その職場から要請があれば行ってプロフェッショナルな仕事をしなければいけません。逆に言えばその特定の職場に毎日行かなくてすむ、というメリットかもしれませんが。。

 

人材派遣会社に頼むととんでもない手数料をとられるようなので、会社としても悪くないシステムだと思うのですがどうでしょうか?難点は、ある程度の規模の会社でないとFloaterを抱える余裕がないことでしょうか。日本で取り入れるとしたら、まずはトレーニングさえ受ければ誰でも業務が行えるよう業務の一般化からかな、という印象です。この仕事は私にしかできない、という状態は結構日本の会社でありがちかと思うんですが、この人がいないと仕事が回らない、というのは会社として健全でないと思うので。