アメリカの市販薬から覚せい剤が作れる?!購入制限に注意
来週末にシアトル在住の日本人向けに市販薬のセミナーを行う予定なので、ただいま合間をぬって資料作りにいそしんでいます。
その中でスーダエフェドリンという市販薬について話そうかと思っているのですが、リサーチ中に面白い事実に出会ったので紹介したいと思います。
スーダエフェドリンとは
鼻づまりを改善する薬
商品名はスーダフェッド(Sudafed)。主成分名はスードエフェドリン(pseudoephedrine)、decongestantに分類される薬です。congestionは詰まっている状態を表しますので、de- (反対語)で、そのcongestionをやわらげる、とりのぞくという意味です。鼻の毛細血管を収縮させることで通りを良くする(鼻がつまるのは血管が拡張しているから)とても良い薬です。が、ちょっと注意点があります。
市販の薬から覚醒剤が作れる?
スーダエフェドリンからメタンフェタミンへ
この市販の鼻づまり薬の成分から、有名な覚せい剤メタンフェタミン(メス、スピード、クリスタルなどと呼ばれます)を作る過程が、実はなかなか簡単なのです。
手順が割と短いのは見て取れるのはないでしょうか。ただ現在使われているのはこの経路ではなく、Red phosphorus Methodという経路のようです。興味のある方は検索すればすぐに出てきますので、ご自由にどうぞ。
覚せい剤開発への日本人の貢献
そもそも覚せい剤(メタンフェタミン)をはじめに発見したのは日本人
Nagai Nagayoshiさんという化学者が1883年に作ったのが最初、エフェドリンの抽出からメタンフェタミンの合成に成功したようです。てっきり覚せい剤といえばアメリカ人の専売特許かと
メタンフェタミンの精製に成功したのも日本人
こちらは1919年、Ogata Akiraさんという薬学者が、現在のクリスタル状のメタンフェタミンを精製した第一人者です。クリスタル状の結晶化に成功したことで水にも溶けやすく、注射やいろいろな剤形に対応できるようになりました。
大量購入の規制
購入の際は写真付きIDを忘れずに
というわけで危険性をはらんだこのSudafed。購入には必ずIDを見せる必要があります。購入できる上限量は州によって多少違いますが、3.6g/日(60mg錠なら60錠)かつ9g/月(60mg錠なら150錠)が基準です。IDの裏のバーコードをスキャンするので、いろいろな店で少しずつ購入してもバレます。一箱に20錠程度入っていることが多いので、良く効くからと言って3箱ほど一気に購入しようとすると薬剤師からお声がかかります、ご注意を。
ほとんどの薬局で、Behind The Counter(処方箋なしで買えるが薬局の中に保管している薬)の扱いになっていると思います。私の働くクリニックは厳しめのポリシーを設定しており、処方箋が必要です(ただし薬剤師の権限で処方可能)。
言うまでもないですが覚せい剤はほんと怖いですよ。ダメ、絶対!