痛み止めはコーヒーで飲んだ方が良い?! -シナジー効果を検証する
コミカレでメディカルターミノロジー(医療専門用語)の授業をとっていたときのことでした。
現役薬剤師の講師が、Synergyという単語について話していました。
「薬学の世界のシナジーは、薬と何かを一緒に摂ることで相乗効果を生むことね。例えばNSAIDsとカフェインにはシナジー効果があるから、私はNSAIDsを飲むときはコーヒーと一緒に飲むわ」
私が勉強不足なのか日本では一般的でないのか、何にせよこれは初耳でした。
そこでこれは本当なのか?果たしてコーヒーと痛み止めはいっしょに飲んだ方が良いのか、検証してみたいと思います!
NSAIDsとは
NSAIDs=痛み止め??
まずはじめに、講師が言っていたNSAIDsとはいったい何者でしょうか。
Nonsteroidal anti-inflammatory drugsの略なのですが、ステロイドではない抗炎症薬という意味です。日本語では一般に「痛み止め」と呼ばれるものがこれに当たります。ロキソニン、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナクなどなどです。
これらはアメリカでは痛み止め(pain killer)ではなく抗炎症薬と呼びます。痛み止めとしてはもっと強いオピオイド(日本では麻薬指定)を使い、このNSAIDsを抗炎症薬として併用することが多いので。ちょっとした頭痛や生理痛にはNSAIDs単体で使いますけどね。
ちなみにアセトアミノフェン(コカール、カロナールなど)は除きます。抗炎症効果はありませんので。
シナジー効果とは
薬の相乗効果
効果1の薬と1の薬を同時に使ったとき、1+1の結果が2ではなく2.5だったり3だったりになることを言います。
よく薬学の世界で言われるのは抗菌薬。
βラクタムと言われる細菌壁の合成を阻害する抗菌薬を使ったあとに、細菌の内部に効く違う種類の抗菌薬を使うと、壁が壊れている分中に侵入しやすくなるため、単体で使うより良く効くようになるというものです。理にかなっていますよね。
エビデンスを探してみる
日本語と英語の情報量の違い
まず、とりあえず世の中にはどう知られているんだろう、と思い検索してみました。
ロキソニン コーヒーと検索すると、何やら信憑性の薄そうな健康情報Webサイトばかり。頭痛を悪化させるとか書いてあるけどそれはカフェイン単体の話だし頭痛の種類によるし、ロキソニンとコーヒーが拮抗するなんて事実無根。雲行きが怪しいです。
日本語ではネガティブな相互作用の話ばかりで、必要ならば間隔をあけて摂る方が良いというのがメインストリームのようです。
で、今度は英語で検索すると論文もがんがん出てきます。何なんでしょうこの違い。
Caffeine as an analgesic adjuvant for acute pain in adults. - PubMed - NCBI
Single dose oral ibuprofen plus caffeine for acute postoperative pain in adults. - PubMed - NCBI
カフェイン併用で疼痛軽減されるからイブプロフェンの量を抑えられるって書いてますね。むしろ副作用の話には触れられていません。併用によって鎮痛補助効果があるのは事実のようです。
注意すること
日本人はアメリカ人より胃腸が弱い?!
NSAIDsもカフェインも胃腸障害を起こす可能性があります。
正直なところ、私が一番最初に講師からこの話を聞いたとき最初に思ったのは、え、胃腸に悪そう、、でした。
効果より副作用に先に目が行くのはなんとも日本人らしいですが、それにくわえ、日本人の胃はアメリカ人のそれよりも消化酵素、食生活の違いから繊細だと言われています。もともと胃痛持ちの人はやめておいた方が無難でしょう。
結論
結局いっしょに飲んだ方が良いの?
結論としては、人によりけりだと思います。カフェインに鎮痛補助作用があるのは間違いないようです。
アメリカ人の胃腸はその胃粘膜障害作用をものともしないので、鎮痛補助効果のみが謳われているのでしょう。NSAIDsごときに胃薬同時処方している例は全く見ませんしね。もともと胃腸が弱い方、どうしても空腹時に飲まなければいけない場合などはやめておいた方が良いと思います。もしくはカフェイン誘発性の頭痛の場合は併用どうこうでなくコーヒーやめときましょうね。
私個人的には短期間しか服用しないし胃痛の既往もないので、コーヒーと併用しています。といってもブラックコーヒーが飲めないので大したカフェイン量はとっていませんが。 。笑
ということでたまには薬剤師らしい記事でした。これ、日本の薬剤師さんの意見も聞いてみたいなぁ。