薬屋、シアトルに移住する

アメリカで薬剤師になるべく奮闘中の日本人薬剤師の日々を綴ります。アメリカで買える便利な市販薬のこととか、英語のこととか。

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七面鳥を食べると眠くなる?サンクスギビングの都市伝説を検証する

アメリカ在住のみなさま、サンクスギビングいかがお過ごしでしょうか。私は今年初めてホスト側を経験し、ひととおりトラディッショナルな料理一式に挑戦しました。

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ところでサンクスギビングといえばターキー。七面鳥ですね。アメリカの都市伝説の一つにターキーを食べると眠くなる、というのがあります。アメリカ人の間では常識のように語られていますが、果たして本当なのでしょうか。検証してみたいと思います。

 

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若干不細工ですが味は良かったです。

 

 

ターキーを食べると眠くなる伝説

お腹いっぱい食べた後に眠くなる現象をFood comaと呼びます。comaとは意識のない状態、be in a comaで昏睡状態にあることを言います。

そこから、ターキーを食べて眠くなる現象をTurkey coma、もしくはTrukey induced comaと呼びます。そんな呼び名があるくらいポピュラーな現象なんですね。

 

ターキーを食べると眠くなると言われる理由

これは全くの事実無根というわけではなく、ターキーに含まれるL-tryptphan(Lトリプトファン)という、体内では作られない必須アミノ酸の一つに起因しています。トリプトファンはSerotonin(セロトニン)という脳内物質の生成に大きく寄与しているのですが、このセロトニンは幸せホルモンと呼ばれ、これが多いときに人はリラックスし、機嫌が良くなり、良く眠れるようになります。また、セロトニンはmelatonin(メラトニン)という睡眠ホルモンの前駆物質でもあります。ここまで聞くとなんだか信ぴょう性がありそうですが・・・。

 

ターキーを食べると眠くなる、が怪しい理由

トリプトファンはターキーだけではなく鶏肉や牛肉、チーズ、ヨーグルト、卵などにも含まれています。そして決定的な理由、ターキーと他の肉類に含まれるトリプトファン量には大差がありません。むしろ鶏肉の方が少し多め。鶏肉食べるたびに眠くなったような覚えはありません。

 

ターキー以外の眠くなる要因

環境要因

アメリカのサンクスギビングは、日本のお正月のようなものです。久々に実家に帰り、ごちそうを食べお酒を飲みながら家族でのんびり数日間だらだらします。リラックスして眠くなるのもうなずけます。

食べ過ぎとアルコール

たくさん食べればその分血流が消化のため胃腸に集中し、脳に行く血流は少なくなり眠くなります。アルコールも脳の興奮を抑えますので、食べ過ぎと相まって眠くなるのも自然でしょう。

 

良質な睡眠をとるために

というわけでターキーを食べると眠くなる、そのフレーズ自体はやはり迷信のようです。夜よく眠れないんだけどターキー食べれば良いのか!と思っていたみなさま、がっかりさせてすみません。ではここで睡眠改善のちょっとしたコツを。

トリプトファン+炭水化物コンビ

セロトニンレベルをあげるには、トリプトファン豊富な食事と炭水化物のコンビネーションが良いようです。トリプトファン豊富な食事を摂った後に、30gの炭水化物を夜食として摂ることでセロトニンが増え、リラックスした状態になり睡眠導入を助けるとのこと。30gの炭水化物は大体大きめのじゃがいもなら1個、ごはんならお茶碗半分程度、パンなら食パン1枚程度です。これだけの量を寝る直前に摂るのが果たして体に良いのかどうかはこの際おいておきましょう。

メラトニン(睡眠ホルモン)の補充

睡眠ホルモンとは呼びますが、睡眠導入剤のように脳の活動を抑える訳ではなく、体内時計を調節する役割があります。年齢を重ねるとこのメラトニンの量が減ってきますので、サプリメントとして摂取することで睡眠障害が改善することがあります。高齢の方やまだ薬を使ったことがない比較的軽い睡眠障害、もしくは体内時計が狂う時差ぼけなどに使うのが良いでしょう。

アメリカ在住の方はメラトニンがサプリメントとして購入できます。日本在住の方は処方箋が必要ですが、ロゼレムというメラトニンの働きを模倣した薬があります。メラトニンのサプリメントも通販を利用すれば購入できますが、その場合は自己責任になりますのでお気をつけください。

 

 参考文献

www.webmd.com