薬屋、シアトルに移住する

アメリカで薬剤師になるべく奮闘中の日本人薬剤師の日々を綴ります。アメリカで買える便利な市販薬のこととか、英語のこととか。

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Amazon Go -レジなしコンビニに行ってきた!-

 今週末の金曜夜、仕事帰りにAmazon Goに行ってきました。シアトルダウンタウンから徒歩圏内にある、レジなしのコンビニです。文字通りお会計をするレジがなく、レジ係の店員さんもいません。スマホさえあれば、好きな商品を袋に入れてそのまま立ち去るだけです。

オフィス街にあるせいか、土日は今のところオープンしていませんが、月〜金の7am〜9pmで開いているので仕事帰りでもじゅうぶん間に合います。

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オープン記念なのかずっとなのか分かりませんが、無料でエコバッグを配っています。みんなこのバッグ使ってますが、もちろんこのバッグではなく自分のカバンなどに入れても大丈夫です。

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店外の様子。少し行列はありましたが、快適に買い物できるよう入店人数を制限しているだけで、さくさくすすむので5分も待ちませんでした。

待ち時間の間にAmazon Go アプリをダウンロードしてAmazonのアカウントにログインします。すると、自分のQRコードが表示されます。

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このQRコードを入口でスキャンするとピロン、と扉が開くので、これで店内に入れます。

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売っている商品は特にこれといって特徴なく、ごく普通のコンビニといった印象です。値段も普通。笑

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あ、一棚だけAmazon Go限定商品がありました。マグカップやウォーターボトルはあまりかわいくなかったので、チョコレートを購入。ぽいっともらったエコバッグに放り込みます。

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お酒も売っていますが、店員さんの年齢確認が入ります。ここは人力ね。笑

 

帰りはスキャンも何もなく、同じゲートをくぐるだけ。出るときは近づくだけで扉が自動で開きます。

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レジも会計もないので、さぁ出るか、と決めてから出るまでは本当に一瞬です。レジ待ちの列に並ぶ必要なく、財布を出したりしまったりといった手間もないのでらくちん。

アプリ上では、退店後すぐはpendingとなり、5~10分程度すると買ったもの、値段などが一覧で表示されます。

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何分間滞在したかバレてる!笑

ここで間違いなどがある場合は修正でき、返金などの対応もしてくれます。

 

というわけでシアトルを離れる前に行っておきたかった、Amazon Goに行ってみたレポートでした!消費者目線としてはやっぱり便利。レジ待ちの時間って地味に苦痛ですし、今回は値段は普通でしたが、導入が進めば人件費の分価格も抑えられるでしょうし。これが普及して慣れてきたら、レジありのところでうっかり万引きしてしまいそうです。。笑

アメリカの職場で休みがとりやすい理由 -Floater positionって何?-

アメリカの病院で働き始めて約2年になるのですが、日本の病院にいたときに比べて休みが本当にとりやすいなーと感じています。日本の病院には5年間勤めたのですが、まとまった休みは最長で7日間、年に1回のみで1年目の新人は不可でした。これでも日本の医療業界的にはおそらく良い方じゃないでしょうか。

今の職場では働き始めて1年程で10日間の休みを取得、2年目にも7日間と10日間のまとまった休みをもらい、単発の有給もちょいちょい使用したりしていますがまだ数日分残っています。

そして重要なのは、休む時に後ろめたさがゼロという点です。日本でほぼ必須の休み明けお土産制度もありませんし、自分が休むことで他の誰かに迷惑がかかったり申し訳ないと感じることもありません。

 

そんな素敵な仕事環境を作り出す一員、Floaterという存在を紹介しようと思います。 

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Floater positionとは? 

ある程度の大きさの病院もしくは薬局には大抵、Floater、もしくはFloat poolと呼ばれるポジションがあります。Floaterの定義はこちら。

an employee without a fixed job assignment: filling in when someone is out.

特定の職場を持たず、他の社員の必要に応じてどこにでも行って働くポジションです。どこにでも、と言っても範囲は指定でき、それは入社時の契約で決めます。どの職場でも働けるように、入職後に複数の勤務地でトレーニングを受けます。Floater Pharmacist, Floater Pharmacy Technicianなどがありタイトルに応じた仕事をするのですが、要は会社の抱える穴埋め要員です。

役割的には派遣社員に少し近いですが、派遣会社に所属するのとは違いその会社の雇用する正社員になりますので、ベネフィットもしっかりしていますし突然の解雇などは少ないです(ゼロではないのは、アメリカでは正社員でもレイオフあるので、、)。ほとんどの場合即戦力の経験者が求められます。

 

Floater positionがある利点

Floaterが穴埋めをしてくれることで、社員の有給、バケーション、病欠、産休、棚卸要員などなど様々な状況に対応できます。

有給はEメールで申請するのですが、申請後数日後にこの日はOK、この日は空いているFloaterがいないから無理、といった審査結果が送られてきます。きちんと自分の代わりがいるので、有給使用にうしろめたさを感じることは全くありませんし、有給日数がきちんとあれば2~3週間のバケーションなども取得できます。

今の職場は人数が多いため、いつも誰かしらがバケーションのような印象で、

”最近見なかったけど調子どうよー?”

”そうそう、10日間休みだったからハワイ行ってきた”

”まじで、そんないなかったっけー?笑”

みたいな会話もよくあります。笑

日曜出かけるから次の月曜休みたいな、とか、5日間連続で働くのダルいから水曜休みとりたいな、とかどんなくだらない理由でも遠慮なく有給を使用して良いのです。そもそも有給ってそういうものであるはずですよね。

 

Floater positionとして働くメリット

給料が良い

急なスケジュール変更があったり毎回慣れない職場で働かなければいけないなどといった不便な点を踏まえて、うちの病院の場合、時給$2くらい高いです。

優先的にバケーションがとれる

必ずいなければいけないという職場がないので、バケーションの予定は立てやすく、承認されやすいです。各店舗から要請がない日はコールセンターやメールオーダー薬局といった、探せばいくらでも仕事がある系の職場に派遣されますので、仕事がないという心配もありません。

経験を積むことができる

たとえばテクニシャンの場合、薬局の窓口で接客もあれば点滴の混注業務もあり、デスクワークもあり電話対応もありでいろいろな業務を行います。いろんな視点で経験を積んでるので、仕事がデキる人が多いです。

人脈ができる

毎回いろいろな職場で様々な同僚と働くので、自然と顔が広くなります。業務で疑問点や確認があるときなど、多店舗の知り合いに助けを求めることもできますし、様々な情報も入ってきやすいです。 

 

Floater positionとして働くデメリット

スケジュールが急に変わる

基本的には数ヶ月分のシフトが前もってもらえるようですが、当日や前日といった急な変更も多いようです。またシフト変更は確実を期すため電話で知らされるので、朝の5時半に電話で叩き起こされ、今日11時からいける?なんてこともあるとか(ならもうちょっと寝かせてくれ、ていう)。下手すると一日の途中で、午後から違う職場に行ってなんてこともあります。私が採用されたときちょうどFloaterのポジションにも空きがあり、どっちが良い?と聞かれたのですが、車がないと話にならないようだったので職場固定の方にしました。

顔なじみになりにくい

基本的には毎日違う職場に行くので、顔なじみの患者さんは出来にくいですし、医師や看護師と連絡するときも完全に他人同士です。毎日同じ職場だとそれぞれの医師のクセや仕事の早いメディカルアシスタントの名前など便利情報を自然と覚えていくので、そういった点では少しやりにくいかもしれません。

苦手な職場にも行かなければいけない

どうしても〇〇店の××さんとは折りが合わない、などがもしあっても、その職場から要請があれば行ってプロフェッショナルな仕事をしなければいけません。逆に言えばその特定の職場に毎日行かなくてすむ、というメリットかもしれませんが。。

 

人材派遣会社に頼むととんでもない手数料をとられるようなので、会社としても悪くないシステムだと思うのですがどうでしょうか?難点は、ある程度の規模の会社でないとFloaterを抱える余裕がないことでしょうか。日本で取り入れるとしたら、まずはトレーニングさえ受ければ誰でも業務が行えるよう業務の一般化からかな、という印象です。この仕事は私にしかできない、という状態は結構日本の会社でありがちかと思うんですが、この人がいないと仕事が回らない、というのは会社として健全でないと思うので。

日本人の知らない?アメリカで大人気のジャパニーズチーズケーキを焼いてみた

 ある日職場で同僚のアメリカ人に聞かれました。

「ジャパニーズチーズケーキ焼いてみたんだけどどうもあのjigglyな感じにならなくて。良いレシピ知らない?」

 

ジャパニーズチーズケーキて何やねん。初めて聞いたわ。

 

と正直に返したところ、え、日本のなんじゃないの?!とびっくりされたあと、この動画を見せられました。

 

www.youtube.com

 

そういえばアジア系ベーカリーでジャパニーズチーズケーキ、というものを見たことはあったんですが、そのお店で勝手に日本を名乗ってるだけかと思っていました。これが発端なんですね。

 

ちなみに'jiggly'という単語を知らない方は、この動画で覚えると最適です。まさにこのチーズケーキのように、ぷるぷるする状態のことを言います。ぷるるん、とかぽよよん、とかいう擬態語が似合う感じ。

ポケモンをご存知の方は、ピンクのまぁるいあいつプリンを思い描いていただいて。あれの英語名がJigglypuffというのですが、なんとなく単語のイメージが伝わりますでしょうか。puffはぷくっと膨らんだもの、という意味。ぷくーっとしてぽよんぽよんのあいつ。。うまいこと名前付けますよね。

 

話が脱線しましたが、何だ要はスフレチーズケーキのことか!ということで、作ってみました。

 

参考にさせていただいたレシピはこちら。

cookpad.com

 

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お正月に購入して使い切れなかったごぼうが奥に写ってますね

 

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メレンゲ作りはハンドミキサー使うとらくちんです。

 

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完成!マーマレードジャム塗りました。ジャムの具はなかった方が良かったか・・・?でも味がひきしまって美味しいです。

焼きあがってすぐもふわふわで美味しいんですが、少しオムレツっぽい味&食感。 冷えて落ち着いてからの方がチーズケーキらしい味がします。

半分職場に持っていきましたが大好評でした。数人のアメリカ人はヘルシーな味がする、と言ってましたが。。笑。

 

アメリカ在住の皆様、これがジャパニーズチーズケーキじゃ!とドヤ顔でポットラックに持って行ってみてください。きっと喜ばれます。

アメリカで薬剤師になる! -コミカレ利用編-

どうも、海外に興味のある日本の医療従事者を応援したい!ぽんです。

先日お問い合わせフォームからアメリカで薬剤師として働きたいという方から連絡をいただいたのですが、携帯メールアドレスのため返信ができなかったのでこちらの記事で返信とさせていただきたいと思います。

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さて、アメリカで薬剤師になるには、

  1. FPGECを受け、インターンシップを終了する
  2. アメリカのPharm.Dを卒業する

の2パターンあります。

パターン1は以前の記事を参照してください(加筆修正しました)

kusuriya-us.hatenablog.com

 

今回はパターン2のPharm.D入学への準備段階、コミカレの利用に焦点を当ててみたいと思います。

 

 

Pharm.Dとは

アメリカの薬学部のことです。ほとんどの場合4年制ですが、夏休みが数ヶ月あり、この夏休みを抜きにしてその分授業にし、短縮3年制にしたものもあります。Pharm.Dは日本でいう大学院(博士課程)に当たり、高校卒業後直接入学することはできません。Prerequisiteと呼ばれる必須科目の修了(通常3年程度)が最低条件ですが、4年制の大学を卒業してから入学する人が多いです。つまり一般的なアメリカ人が高校卒業後薬剤師になるまでにかかる平均的な年数は8年です。

 

必須科目Prerequisiteの取得

必須科目はどの薬学部を受験するかで少しずつ違ってきますが、コミュニティカレッジ(以下コミカレ)、もしくは4年制大学で取得できます。もし行きたい薬学部がもう決まっている場合は、そちらの大学のPrerequisite Infoを確認し、その科目を提供しているコミカレや4年制大学に行くと良いでしょう。海外で取得した単位も認めてもらえる場合もありますが、その場合でもEnglishやPublic speakingなど英語関係の単位はアメリカ内の学校で取り直す必要があります。

 

コミュニティカレッジと4年制大学

コミカレや4年制大学はどちらもUndergraduate Schoolと呼ばれます。コミカレは日本でいうと専門学校が近いでしょうか。いろいろな種類の専門学校が集まった総合専門学校のようなものです。学位としては、CertificateもしくはAssociate degree(AA)が取得できます。短期の留学生は好きな授業だけ選んで受けたりしますが、CertificateやDegreeが欲しい場合は指定された授業を受けます。通常は2年以内に修了します。

4年制大学は日本と同じで、Bachelor's degreeが取得できます。ただ学費が高いので、最初の教養科目2年をコミカレで取得し、その後単位をTransferして4年制大学に編入し上位科目や専門科目を取得するというパターンが多いです。必須科目さえ取得していれば後は何の授業をとっても薬学部入学には差支えないので、例えば心理学でDegreeを取得してその後薬学部に入学、なんてことも可能です。

 

コミカレ利用をおすすめする理由

授業料が安い

そもそもアメリカの大学のほとんどがInternational Studentに対して授業料をふっかけてきます。これはコミカレと4年制大学とどちらもですが、4年制の大学はさらに輪をかけて高額です。コミカレと4大、3倍くらい違います。

講師と近づきやすい

4年制大学と比べ、クラス単位が小さいので講師や他のクラスメイトと仲良くなりやすいです。うちの講師は2、3回目の授業でもうクラス全員の名前を覚えていました。

良い成績をとりやすい

GPAと呼ばれる成績が後程大学や大学院への編入に重要になってくるのですが、コミカレは大体の場合学位を持っていない人が通っています。つまり、大学レベルの高度な教育は受けてきていない人たちです。名門大学に行って恐ろしく頭の回転が速い生徒たちに囲まれるよりは良い成績をとりやすいと思います。講師はほとんど薬剤師ですのできちんと必要なことは学べますし。

ファーマシーテクニシャンという選択肢

金銭的な問題で、テクニシャンとして働きながら薬学部の入学準備やFPGEEの受験準備をしている人もたくさんいます。コミカレではテクニシャンとして必要な知識を1年でさくっと教えてくれまし、手っ取り早くコネも出来ますし、OPTという勤労可能なビザももらえますのでまず経験を積みたい場合には最適だと思います。

実際日本で薬学部を卒業していればテクニシャンになるのにコミカレに行く必要はないのですが、私はコミカレに行って経験を積んだことは結果的には良い判断だったと思っています。推薦状を書いてくれるコネも出来たし、薬学部入学の面談に向けて自信もついたし、あと在学中旦那に知り合ったことでビザの心配もなくなりましたしね。笑

 

コミカレの選び方

選び方としては、International Studentsを受け入れ慣れているところが良いと思います。職業訓練校などにもPharmacy Technicianのコースがあったりしますが、I-20やビザ、SSNの取得など留学生特有の問題があったときに詳しい学校スタッフがいた方が良いです。Webサイトで留学生の受け入れについてチェックしてみると良いでしょう。

あとは医療系のCertificateが充実しているところを選ぶと良いと思います。看護系や栄養系、放射線など他の医療系の人たちと一緒に授業を受けて話が出来るのはすごく面白いです。

ちなみに私は西海岸の方がのんびりしていて良さそう、あ、ここの学校Pharmacy Technicianのコースある、というシンプルな理由で決めました。あんまり考えてなかった。笑

 

日本でできるコミカレ留学の準備

英語の勉強

具体的にはTOEFLの勉強です。英語そのものだけでなく、何かのトピックに対して自分の意見をさっと言えるように練習しておくと授業が始まってから役立ちます。私はグループディスカッションで言いたいことがあるのに言えなかったのが一番つらかったので。読む・書く・話す・聞く、まんべんなく必要です。ちなみにコミカレの入学は全く難しくありません。TOEFLの点数さえあれば大体どこでも入学できます。

経験を積む

プロフェッショナルとしての経験は無にはなりません。私は病院薬剤師時代に注射剤の調製や製剤もさんざんやっていたので、注射剤の授業では褒められまくりでしたし、日本ではこれどうなの?といろいろ話しかけてもらえるきっかけにもなりました。まだ在学中であれば、薬局や病院でインターンシップなどの経験をしていくのも良いと思います。

コネをつくる

アメリカは意外とコネ社会です。日本にいるうちにアメリカの薬学部での経験がある人や詳しい人を紹介してもらうと良いと思います。在学中であれば教授と仲良くなっておきましょう。後々紹介状など必要になってくることもありますし、海外にも顔の利く教授と仲良くなれると良いです。ちなみに日本の大学の成績はそこまで気にしなくても大丈夫だと思います。私も正直良くなかったですし、日本からアメリカの単位に換算される段階でちょっと上がったりします。笑

 

 

渡米前、アメリカの薬学部関連の情報があまり見つけられなくて苦労したので、少しでも助けになれば幸いです。もし質問などあれば遠慮なくどうぞ~!

日本でも導入検討中?アメリカ移住薬剤師からみたリフィル処方箋のメリット・デメリット

なにやら日本の薬局業界でもリフィル処方箋の導入が検討されているという噂を耳にしました。日本とアメリカどちらの薬局も経験した私の視点で、日本で導入した場合のメリットやデメリットを考えてみました。

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リフィルとは?

Refillという言葉自体は薬学用語ではなく、詰替とかおかわりといった意味合いがあります。カフェでRefillといえばコーヒーのおかわりのことですし、洗剤や文房具など割と何にでも使える便利用語です。

リフィル処方箋というと、繰り返し使える処方箋のこと。処方箋にRefillという欄があり、医師が0~11の数字、もしくは必要に応じて何回でも、といったコメントを入力します。日本では処方箋の期限は4日ですが、アメリカでは制限のある薬(Controlled Drugs)を除いて1年。その間に薬がなくなった場合は医師の診察なしで薬局に行くだけで薬を受け取ることができます。

 

リフィル処方箋の使い方

処方箋は電子的に送信されてくることがほとんどですが、紙の処方箋もあります。どちらにせよ、リフィルの時は患者さん自身が用意するものは特にありません。オンライン、電話、もしくは薬局に直接出向いてどの薬が必要かを伝えます。薬局の店頭で待たなくてすむよう、できるだけ数日前に注文をしてからとりに来ていただくようにお願いしています。

 

リフィル処方箋導入のメリット

待ち時間が減る

リフィルは既に一度薬剤師のチェックを受けた薬ですので(用量や相互作用など)、監査の時間が短縮されます。また、あらかじめ電話などで注文することで薬を前もって用意しておくことができ、薬局に到着したときにはすべて準備が整っているという状況になります。病院に行かなくてすむため、病院での待ち時間も当然なくなります。

頻繁に医者に行く必要がなくなる

薬局は病院やクリニックに比べて長めに開いていることが多いです。リフィルが使えれば、仕事が忙しくて薬局に電話一本入れるだけで注文ができ、仕事帰りに受け取りに行くといったことも可能になるでしょう。

医療従事者の負担軽減

医師も症状の安定している慢性期の患者さんに必要以上に時間を割くことなく、緊急度の高い患者さんや他の業務に集中できます。もちろん経過観察の必要な患者さんにはリフィルは出さず、また次回診察に戻ってきていただけば良いだけです。薬剤師という視点からは、薬局薬剤師の職能が拡大されるのもメリット。

医療費の削減

例えば手持ちの薬が余っていた場合、単純にその薬のリフィルを注文しなければすむだけなので、無駄な薬を毎回受け取る必要がなくなります。医師の診察が少なくなる分、病院の診療費も削減されるでしょう。

 

リフィル処方箋導入のデメリット

転売の危険性

薬を手に入れるのが簡単になることで、転売されるのではないかという問題です。が、そもそもほとんどのオピオイド(高く売れる)は日本では適用が少なく、処方頻度自体がものすごく低いのでリフィル関係なく手に入れることは難しいでしょう。あとは向精神薬などでしょうが、そういった現在処方制限のあるものはリフィルも制限付きになっていくと思いますので、リフィル制度を導入=転売増加となる、とはちょっと考えにくい気がします。

ITシステムの遅れ

リフィル制度を導入すると、処方箋の期限(4日)も変わってくることになると思いますが、これがもし数か月や半年などなってくると、リフィルを受ける度に日付を確認するのはなかなかの手間です。リフィル回数も手動で数えるのはなかなかに無理があります。リフィルを受ける度に3ヶ月前の紙の処方箋を引っ張り出して、などとやっていては薬剤師さんの負担がとんでもないことになるため、導入前にIT業界さんにもう少しがんばってもらう必要があると思います。

薬剤師の負担増加

リフィルの注文・調剤も加わることで業務量も増えるはず。現状の薬剤師+医療事務のみでは、薬剤師が薬のピッキングなど単純作業に時間を割かれ、職能が拡大するどころか逆効果になってしまう気がします。調剤の機械化やテクニシャン制度などの導入を先にするべきでしょうか。

不要な薬の漫然投与

リフィル制度の有無にかかわらず、薬を中止するタイミングというのは難しいものです。リフィルが導入されることで、とりあえずもらえるものはもらっておこう、と症状もないのに必要以上に漫然と飲み続けてしまうことが起こり得ます。

アメリカで何故この状況にならないのかというと、保険制度の違いです。アメリカでは保険請求の結果はコンピュータを通じてその場で分かります。例えばある薬は、指定の薬を試したけど副作用やアレルギーがあった人だけ使用が可能。またある薬は血液検査の値を数ヶ月おきに送信し、指定の範囲内だった場合のみ使用可能。年齢制限のある薬なんかもあります。どうしてもその患者さんに必要な場合は、医師もしくは薬剤師から保険会社へ医療的必要性の説明をすることで例外が考慮されます。この厳しく複雑な保険制度のおかげ?で、必要な薬以外は自然とカットされていくのです。一長一短ではありますが、無駄な薬の処方が少なくなるというのは事実です。

患者の主体性の不足

私が一番ネックだと思っているのは実はこれです。日本の文化背景上、餅は餅屋、プロの方にすべてお任せしますという態度の方が多いのです。言われたことに従順で、”良い患者”とも言えるのかもしれないのですが、、このリフィル制度との相性は悪いです。なぜなら処方箋を持参した場合は、何の薬だか分からないけどとりあえず先生が出した薬ちょうだい、というのも可能ですが、リフィルになってくるとどの薬が必要なのか患者さん自身にきちんと把握していただく必要があるからです。例えば薬の名前が分からず血圧の薬、などと言われても高血圧にも頻脈にも心臓病にも使用されるような薬もありますし、何種類も血圧の薬を飲んでいる場合そのうちどれが必要なのかなんて薬局側では分かりません。

何の薬が欲しいのか分からない患者さんを助けるのはなかなかに大変です。業務量的にも、この間の白くて丸い薬、などというリクエストに一人ひとり対応していくのは無理でしょう。

 

以前記事に書きましたが、アメリカ人が薬に対して意識が高いのはこのリフィル制度も大いに関係していると思うんです。

kusuriya-us.hatenablog.com

 

ということで、何だかデメリットに力が入ってしまいましたが、私は推奨派です。日本の薬剤師はもっといろんなこと出来るはず、と常々思っています。もっと薬学的知識が必要な業務にシフトしていく第一歩になれば良いなぁと思います。リフィル処方箋、あなたはどう思いますか?