粉薬が未だに日本で愛用される4つの理由
日本で未だに根強い人気を誇る粉薬。
しかしアメリカに来て、そういえば粉薬をとんと見ないことに気が付きました。病院勤務のときにさんざんやっていた錠剤の粉砕も見たことがありません。
嚥下状態の悪いときの薬の投与方法について記事を見つけましたが、粉薬という選択肢はそもそもなく、錠剤の粉砕やカプセルを開けるのは最後の手段のようです。(アメリカでなくイギリスの記事ですが)
How to help if a patient can't swallow
なぜ海外でこんなに敬遠される粉薬が、日本ではもてはやされるのか、考察してみました。
保管が簡単
常温保存が可能で持ち運びも簡単
高温多湿な日本ですが、シロップ剤は調剤後1-2週間で廃棄するよう指導されることが多いと思うので、通常問題になることはほぼないかと思います。ただ、うっかり直接口を付けてしまったり高温になる場所に放置してしまった場合、細菌が繁殖してしまうという可能性はゼロではありません。ものによっては冷蔵庫に保管しなければならない種類もありますし、出先などで必要な場合はまるごとボトルを持ち歩くか、小さいボトルに移し替える必要があります。
粉薬の場合は一回服用量ごとに分包してくれるので、次のパックは常に清潔に保たれます。うっかりこぼしたりしても、一回分のダメージですみます。
また水分を含んでいないので、うっかり悪環境に放置してしまったとしてもシロップ剤より安定した薬効を保ってくれます。出かける場合も一パックだけ切り取って持っていけばいいので簡単です。
投与が簡単
投与する人の負担が少ない
日本でシロップ剤が処方されるときは、5mLなどきっちりした数字で処方されることがほとんどだと思います。 それでも、毎回カップで5mLを図りこぼさないように与え続けるより、粉薬の一パックを破いて開ける方が簡単でしょう。
アメリカでシロップ剤を調剤するときは、カップとシリンジを一緒にお渡します。1回3.8mLなんて処方も普通に出されますが、シリンジでこの線までですよ、とお教えしてあとはお任せします。もしこのシリンジで計量+投与が日本でも普通になったら、面倒だと感じる患者さんも少なくないでしょう。
数種類の粉薬を混合できる
複数処方されても飲むのは1パックですむ
粉薬が何種類か処方された場合、薬効に問題がない場合は抗菌薬など一部を除き、一つにまとめてくれると思います。シロップ剤もものによっては混ぜてくれると思いますが、粉薬と比べると配合変化が多く一つにはまとめられないことが多いです。混合した場合はかさ増しの賦形もしなくてすむので飲む量も少なくてすみますし、投与も簡単です。
良薬口に苦し、という文化
薬=粉という意識
そもそも生薬から始まった日本の薬の歴史。薬効のある植物や鉱物を細かく砕いたり煎じたりして服用することが始まりでした。
つまり、薬=粉という形式がそもそも根付いていたのでしょう。また、苦い味を直接味わうことで、”薬を飲んでいる”というプラセボ効果を生み出す場合もあると思います。胃薬なんかも、粉だと溶けている感を感じられて早く効くような気がします。(おそらく気のせいです)
そうやって伝統的に飲まれてきた粉薬ですから、粉薬を好む患者さんもしくは医師は一定数いらっしゃるのではないかと思います。電子書籍がいかに便利で場所をとらなくても、実際の紙の本を好む人が一定数いるように。。(私です)
というわけで私なりに粉薬が日本人に愛される理由を考察してみました。
薬剤師観点から一言。散剤の調剤ないの、楽ですよー・・・笑。